帰ったら、家に猫がいなかった。
元々が通い猫。いつも家にいるとは限らない。
ただ、最近いつも必ず玄関まで出迎えてくれていただけに、若干違和感を感じているだけだ。
実家に帰ったか。或いは友人のところに泊まりに行ったか。
おそらくはそんなところだろう。
過去にも何度かあったことだ。
いつもならリカルドが作った料理を美味しそうに食べるスパーダがいない為か、どうもきちんとした物を作る気になれず、今日は簡単に炒飯で済ませてしまうことにした。
そういえば、スパーダと暮らすようになってからはなんだかんだできちんと料理をしていたのだったか。
出された食事をあまりに嬉しそうに食べるものだから、つい無意識にやっていたようだ。
直ぐに出来上がった炒飯を、一人テレビを見ながらもそもそと頬張る。
手抜き料理だったからか。
或いは目の前に猫がいないからか。
久しぶりの一人の食事は味気なかった。
(企画部屋より移動)
元々が通い猫。いつも家にいるとは限らない。
ただ、最近いつも必ず玄関まで出迎えてくれていただけに、若干違和感を感じているだけだ。
実家に帰ったか。或いは友人のところに泊まりに行ったか。
おそらくはそんなところだろう。
過去にも何度かあったことだ。
いつもならリカルドが作った料理を美味しそうに食べるスパーダがいない為か、どうもきちんとした物を作る気になれず、今日は簡単に炒飯で済ませてしまうことにした。
そういえば、スパーダと暮らすようになってからはなんだかんだできちんと料理をしていたのだったか。
出された食事をあまりに嬉しそうに食べるものだから、つい無意識にやっていたようだ。
直ぐに出来上がった炒飯を、一人テレビを見ながらもそもそと頬張る。
手抜き料理だったからか。
或いは目の前に猫がいないからか。
久しぶりの一人の食事は味気なかった。
(企画部屋より移動)
PR
まさかこの自分がこんなガキ相手に。
それが、正直な気持ちだった。
惚れた相手は、十も年下の同性だった。
年齢もそうだが、まず性別からおかしい。
今までそう不自由したこともなかったし、そんな趣味はなかったというのに。人生とは不可思議なものだ。何が起こるか全く分からん。
これがまだ、ミルダだったら分からなくもない…と、思うのだ。ヤツはヤツで色々と問題だろうとは思うのだが、それでも見目はそこいらの少女よりは少女らしいと、女性陣のお墨付きを得ているくらいだ。
僅かに趣味が変わったと思えば、受け入れられる…可能性も、ある。
しかし、惚れた相手はベルフォルマ。前衛で双剣を振るう、逞しいガキだ。
確かにまだ幼さの残るガキで細身ではあるが、躰つきは筋肉質で抱き心地はすこぶる良くない。
良くないはずなのだが、気付けばベルフォルマを抱き締めている自分がいた。
まったく、何が楽しくて、自分はベルフォルマが好きなのだろう。
確かに、後悔と挫折を繰り返しながらも真っ直ぐに前を見据える姿だとか、狡い大人の俺とは違って情に厚く義理堅いところだとか、素直に感情を顔に出してしまうところだとか、好ましく思うのだが。
「ちょ、リカルド! 苦しいっつーの!」
まあ、つまりは、文句を言いながらも照れ笑いをし、大人しく腕の中に収まっているコイツを強く強く抱き締めてしまう程には、俺はベルフォルマに惚れているのだろう。
惚れた弱み。どれほど俺がコイツを好いているのか、気付かれていないのが唯一の救いだ。
それが、正直な気持ちだった。
惚れた相手は、十も年下の同性だった。
年齢もそうだが、まず性別からおかしい。
今までそう不自由したこともなかったし、そんな趣味はなかったというのに。人生とは不可思議なものだ。何が起こるか全く分からん。
これがまだ、ミルダだったら分からなくもない…と、思うのだ。ヤツはヤツで色々と問題だろうとは思うのだが、それでも見目はそこいらの少女よりは少女らしいと、女性陣のお墨付きを得ているくらいだ。
僅かに趣味が変わったと思えば、受け入れられる…可能性も、ある。
しかし、惚れた相手はベルフォルマ。前衛で双剣を振るう、逞しいガキだ。
確かにまだ幼さの残るガキで細身ではあるが、躰つきは筋肉質で抱き心地はすこぶる良くない。
良くないはずなのだが、気付けばベルフォルマを抱き締めている自分がいた。
まったく、何が楽しくて、自分はベルフォルマが好きなのだろう。
確かに、後悔と挫折を繰り返しながらも真っ直ぐに前を見据える姿だとか、狡い大人の俺とは違って情に厚く義理堅いところだとか、素直に感情を顔に出してしまうところだとか、好ましく思うのだが。
「ちょ、リカルド! 苦しいっつーの!」
まあ、つまりは、文句を言いながらも照れ笑いをし、大人しく腕の中に収まっているコイツを強く強く抱き締めてしまう程には、俺はベルフォルマに惚れているのだろう。
惚れた弱み。どれほど俺がコイツを好いているのか、気付かれていないのが唯一の救いだ。
じっとりと睨んでくる少年の様子に、もはや溜め息しか出ない。
始めに「手当てをする」と言って連れてきたというのに、覚えていないのだろうか。
「あいにく、服の上から治療できるような技術を俺は持ち合わせていないのだがな」
「………あ」
言われて漸く気付いたのか、少年は間抜けな声を上げ、勘違いから警戒心を露わにしたことを恥じたのか僅かに目元を朱に染め上げた。
気まずそうにもそもそと服に手をかけたのを確認して、リカルドは救急箱を取りに行く。
ついでに、塗れタオルも用意しておくべきだろう。
* * * * *
脱げと言われた時は流石にどうしようかと思ったが、言われてみれば確かに着衣のままでは服の下の傷まで見ることはできない。スパーダは、己の勘違いで警戒心を剥き出しにしたことを恥じた。相手は、純粋に傷の手当てを申し出てくれたというのに。
しかし、それも仕方がないと思うのだ。
自分としては大変不本意なのだが、何故だかスパーダは変なのにモテた。勿論、可愛らしい女の子達からも人気はあるのだが、それとは別に声をかけられることが幾度かあったのだ。
お小遣いをあげるからホテルに行こうだとか、映画(とか言ってたがどうやらエロビデオ、しかもホモのヤツ)に出てみないかとまで言われたことさえある。因みに、せっかくだから前者は上手く騙くらかして小遣いだくは巻き上げたが。
その為、この男もそういう趣味があるのかと疑ってしまったのだ。
(――悪ィことしちまったかな)
けれども、何の脈絡もなく脱げとだけ言ってきた男だって、十分悪いではないか。
そう責任転嫁することにして、漸くスパーダは脱ぐために服に手をかけた。
(企画部屋より移動)
始めに「手当てをする」と言って連れてきたというのに、覚えていないのだろうか。
「あいにく、服の上から治療できるような技術を俺は持ち合わせていないのだがな」
「………あ」
言われて漸く気付いたのか、少年は間抜けな声を上げ、勘違いから警戒心を露わにしたことを恥じたのか僅かに目元を朱に染め上げた。
気まずそうにもそもそと服に手をかけたのを確認して、リカルドは救急箱を取りに行く。
ついでに、塗れタオルも用意しておくべきだろう。
* * * * *
脱げと言われた時は流石にどうしようかと思ったが、言われてみれば確かに着衣のままでは服の下の傷まで見ることはできない。スパーダは、己の勘違いで警戒心を剥き出しにしたことを恥じた。相手は、純粋に傷の手当てを申し出てくれたというのに。
しかし、それも仕方がないと思うのだ。
自分としては大変不本意なのだが、何故だかスパーダは変なのにモテた。勿論、可愛らしい女の子達からも人気はあるのだが、それとは別に声をかけられることが幾度かあったのだ。
お小遣いをあげるからホテルに行こうだとか、映画(とか言ってたがどうやらエロビデオ、しかもホモのヤツ)に出てみないかとまで言われたことさえある。因みに、せっかくだから前者は上手く騙くらかして小遣いだくは巻き上げたが。
その為、この男もそういう趣味があるのかと疑ってしまったのだ。
(――悪ィことしちまったかな)
けれども、何の脈絡もなく脱げとだけ言ってきた男だって、十分悪いではないか。
そう責任転嫁することにして、漸くスパーダは脱ぐために服に手をかけた。
(企画部屋より移動)
抵抗するだけ無駄だと判断したのか、そのうち少年は暴れることを止めた。格段に運びやすくなったので、それについてリカルドは何も言うつもりはない。
黙って歩くリカルドに、少年も黙って身を預けていた。
さほど掛からずに、リカルドの自宅に辿り着く。閑静な住宅街にあるこじんまりとした小さな一軒家は、リカルドの亡き両親が残したものだ。
リカルドのイメージとは異なる可愛らしい家に、肩に担がれたままの少年は感嘆の声を上げた。
「なんか、顔に似合わず可愛い家だな」
「死んだ母の趣味だ」
「ふーん…」
淡々と応えれば、まじまじと家を見上げる少年。
「いい趣味してんだな」
ポツリと小さく零したその言葉は、イヤミではなく本当にそう思ってのことだろう。それは、怪我と血にまみれ、いかにも喧嘩に明け暮れる不良といった感じの少年が発するには、穏やかな声の響きだった。
少年を担いだまま上がり、リビングへと向かう。手荒にしたつもりは無かったのだが、少年を革張りのソファへと降ろすと痛みに顔を歪めてみせた。
さて。傷の手当てをする前に、傷の程度を確認したいのだが。
「……脱げ」
簡潔にそれだけを伝えたところ、少年はあからさまに身を引いた。
ここに来るまでの道中で、初めよりは若干和らいでいたハズの警戒心が剥き出しに向けられる。
(………このガキ、変な風に勘違いしてやいまいか?)
(企画部屋より移動)
黙って歩くリカルドに、少年も黙って身を預けていた。
さほど掛からずに、リカルドの自宅に辿り着く。閑静な住宅街にあるこじんまりとした小さな一軒家は、リカルドの亡き両親が残したものだ。
リカルドのイメージとは異なる可愛らしい家に、肩に担がれたままの少年は感嘆の声を上げた。
「なんか、顔に似合わず可愛い家だな」
「死んだ母の趣味だ」
「ふーん…」
淡々と応えれば、まじまじと家を見上げる少年。
「いい趣味してんだな」
ポツリと小さく零したその言葉は、イヤミではなく本当にそう思ってのことだろう。それは、怪我と血にまみれ、いかにも喧嘩に明け暮れる不良といった感じの少年が発するには、穏やかな声の響きだった。
少年を担いだまま上がり、リビングへと向かう。手荒にしたつもりは無かったのだが、少年を革張りのソファへと降ろすと痛みに顔を歪めてみせた。
さて。傷の手当てをする前に、傷の程度を確認したいのだが。
「……脱げ」
簡潔にそれだけを伝えたところ、少年はあからさまに身を引いた。
ここに来るまでの道中で、初めよりは若干和らいでいたハズの警戒心が剥き出しに向けられる。
(………このガキ、変な風に勘違いしてやいまいか?)
(企画部屋より移動)
* * * * *
――厄介なモノを見つけてしまった。
夜勤明けの疲労しきった体に鞭打って帰宅していた時。リカルドは、ソレを見つけた。
繁華街ならいざ知らず、住宅街の路地に転がった血まみれの少年。
まさか死んではいまいが、ピクリとも動かない少年の様子に、リカルドはさてどうしようかと考える。
救急車を呼ぶか。警察を呼ぶか。
このまま帰宅して早々にベッドへダイブしたい身としては、できればどちらも避けたい選択である。
かといってさすがにそのまま放置する訳にもいかず、何をするのがベストかと考えていると、悪態を吐きながら少年がふらり立ち上がった。
見た目程には重傷ではないらしいが、足を捻りでもしたのか足元が覚束ないし、どうやら頭も切っているようだった。
ならば、無理に体を動かさないのが得策か。
「無理はしない方がいい。無理に動けば傷に障る」
リカルドの声に、ハッと顔を上げた少年。
人を寄せ付けまいと鋭い眼光で睨んできた彼は、話の様子から家出少年のようだ。
しかも、見た目程ではないとはいえ痛手を負っているにも関わらず、家で治療することも病院に向かうこともする気配はみられない。
放置する訳にもいかず、そしてリカルドは早く帰宅したい。
ならば、リカルドが取る行動はただ一つ。
「待て、何すんだよオッサン!」
とっとと手当てをし、自力で帰るなりさせれば良いのだ。
少年を肩に担ぎ上げれば、離せと暴れ始めて。
それでも傷の手当ては必要だろうと少年を自宅まで連れ込んでしまう自分の面倒な性分に、リカルドは自身で辟易し溜め息を吐いた。
(企画部屋より移動)
――厄介なモノを見つけてしまった。
夜勤明けの疲労しきった体に鞭打って帰宅していた時。リカルドは、ソレを見つけた。
繁華街ならいざ知らず、住宅街の路地に転がった血まみれの少年。
まさか死んではいまいが、ピクリとも動かない少年の様子に、リカルドはさてどうしようかと考える。
救急車を呼ぶか。警察を呼ぶか。
このまま帰宅して早々にベッドへダイブしたい身としては、できればどちらも避けたい選択である。
かといってさすがにそのまま放置する訳にもいかず、何をするのがベストかと考えていると、悪態を吐きながら少年がふらり立ち上がった。
見た目程には重傷ではないらしいが、足を捻りでもしたのか足元が覚束ないし、どうやら頭も切っているようだった。
ならば、無理に体を動かさないのが得策か。
「無理はしない方がいい。無理に動けば傷に障る」
リカルドの声に、ハッと顔を上げた少年。
人を寄せ付けまいと鋭い眼光で睨んできた彼は、話の様子から家出少年のようだ。
しかも、見た目程ではないとはいえ痛手を負っているにも関わらず、家で治療することも病院に向かうこともする気配はみられない。
放置する訳にもいかず、そしてリカルドは早く帰宅したい。
ならば、リカルドが取る行動はただ一つ。
「待て、何すんだよオッサン!」
とっとと手当てをし、自力で帰るなりさせれば良いのだ。
少年を肩に担ぎ上げれば、離せと暴れ始めて。
それでも傷の手当ては必要だろうと少年を自宅まで連れ込んでしまう自分の面倒な性分に、リカルドは自身で辟易し溜め息を吐いた。
(企画部屋より移動)