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日記を主に、SSやイラスト,ネタバレ前回の語りなど。 何が飛び出すか分かりまセン。
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はっきり言って、何が変わったのかと訊かれても「別に特に」と言うしかないような新しい生活。
強いて挙げるなら、世話する相手が赤ん坊の頃から育てていたようなお坊ちゃまから、本当は有能なクセに中身は子供みたいな皇帝と、彼の愛玩動物にとって変わったということ位だろうか。
ガルディオス家の復興を果たしたとはいうものの、貴族院での仕事はまだ皆無。今のところは様子見ということなのだろうが、ゆくゆくは確執の残る軍と貴族院の橋渡し役となって貰おうなどと大それたことを皇帝陛下とその幼なじみの大佐殿は考えているらしく、なんとも胃が痛いものだ。
まあ、例えそれが冗談だろうが本気だろうが、ガイの目下の仕事はブウサギの世話係り。ここ数日で十分に慣れた道順で、今日もまた家畜小屋と化した皇帝の私室へと足を踏み入れた。

「おはようございます陛下」
「おお、今日も早いな、ガイラルディア。おはよう」

皇帝とその臣下が交わす会話としては簡易に挨拶をし、漸く懐いてきたらしくわらわらとガイの周りに寄ってきたブウサギの毛並みをそっと撫でてやる。

「おはようネフリー、アスラン、サフィール、ゲルダ、ジェイド。…ルークもおはよう」

一つ一つ間違えることのなくなった名前を呼べば、ふごふごと鳴きながらすり寄ってくるブウサギ達の様子に自然と笑みが浮かぶ。確かに世話は楽ではないが、基本的に動物は好きだ。
生き物はそういったものに敏感だというから、初めてすり寄られた時はなんとも感動したものだ。
ルーク一匹だけ少し離れた所に居るのは残念だが、ガイに懐いていないというよりも、ブウサギの群の中では新参者である為にこの輪に入り難いだけなのだろう。

「今日も、散歩してからブラッシングの流れでよろしいですか?」

いつも同じ流れなので訊ねるというより確認の意で問うと、いや今日はいいと言いピオニーは手招きをする。
何事かと首を傾げ傍に寄ると、思い切り腕を引かれた。なんとか踏みとどまろうとはするものの、あまりにとっさなこと過ぎてそれも叶わない。バランスを崩したガイは、次の瞬間にはピオニーの腕の中に収まっていた。

「陛下!?突然何を…!」
「今日は、俺の相手をすること」

そんなことを言い出して、その体勢のまま後ろへと倒れ込んだ。二人分の体重はベッドがしっかりと受け止め僅かに軋ませる。けれども流石は皇帝が使用するだけの物であり、衝撃も音も無駄に豪華なクッションが呑み込んでいった。

「俺は連日の職務による疲労を癒やす為に寝る。ってコトで、ガイラルディアはクッション代わりな」
「何を仰るのですか…!」
「いいからいいから」

皇帝命令ってコトで。そんな無茶苦茶なことを言いながらも髪を梳く手つきはひどく穏やかで優しい。
布越しに伝わる体温がとても温かくて、そういえば以前ジェイドが陛下は子供体温だと言っていたのを思い出した。その温度はとても心地良いもので、トクリトクリと心音が一つ伝わる毎にゆっくりと眠りへと誘われる。
ああ、まだ日は昇ったばかりで、やらなくてはいけないことは山のようにあるのに。
分かってはいても、瞼が降りていくのを止める手だてがない。

「このまま寝ちまおうぜ?」

耳元で囁かれる甘い誘惑。

――――堕ちていく

 


 * * *

 


「おや?こんな朝っぱらから随分と豪勢なベッドでガイは居眠りですか?」

書類片手にノックもせずに入って来たジェイドは、視界に映る光景に僅かながら驚いた様子を見せたもののいつもの調子でそれをからかってみせた。
皇帝の私室。そのベッドの上で、更には皇帝の腕に抱かれ身を預けて眠るガイ。
部屋の主であるピオニーはというと、そんなガイを抱き込んだまま彼の髪を楽しそうに梳いていて。これを豪勢と言わずに何と表すべきか。

「まあ、そんなこと言うなジェイド。やっとガイラルディアが俺に懐いたんだぞ?まずは祝え」

まるでガイをブウサギと同列のように言ってはのけるが、彼を見詰める目元はその言葉よりも遥かに優しさに満ちている。

「それに、本人は全く気付いていないようだったが環境が大きく代わって疲れが溜まってたんだろ。駄目になるまえに休ませてやらないとな」

ダメ元で無理やり寝かしつけようとしたら、案外素直に眠ってくれたな。
そう言って笑うピオニーは、先程まで梳いていた自身より薄い色の金糸へと戯れるかのように口付けを落とした。

「それは残念です。もう少し疲れ果てたところを、私が癒やして差し上げる予定でしたのに」
「……ガイラルディアはやらんぞ」
「貴方のものでもないでしょう?」

あからさまに顔を歪めて威嚇してくるピオニーにジェイドはおどけて返してやったが、その言葉の真意はジェイド本人ですら掴めてはいない。
ただガイ一人が、そんなことなどつゆ知らず穏やかな寝息を立てているだけだった。

 

 

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ヤツのどこが好きなのかと訊かれると、正直困る。
確かに大人だと思う事も稀にあるが、どちらかというと大人気ないと思う事のが多いし、喰えない性格をしている。
一緒にいて安らぐのかといえば、寧ろからかわれて疲れ果ててばかりだ。
綺麗な顔立ちだが、ガタイは俺より良いし、惚れる要素など何一つない。
ない、のに。それでもあの男に心奪われているというのだから、人間とはまた随分不思議な生き物だと、自分自身思ってしまった。

 

(ジェイ←ガイ/200字)

11.That's the way the cookie crumbles/世の中はそんなもんだ

配布
∮regenbogen∮


-----------------

一応私の趣味でジェイ←ガイ表記にしたけど、別に矢印なくても左右逆でも、更にはガイじゃなくても問題ない内容になった気がする。
つか、この11個目のお題がずっとネタが出て来なくて。お題からズレた気がするけどもういいや。


 

 

ノックをせずに彼女の私室に入るのは、いつものことだった。
それは油断するとこっそり私室を抜け出したり彼女が愛玩する家畜と戯れていたりとするその行動を牽制するという意味を持つのだが、まあ、自分と彼女との仲で今更、というのも大きかったりする。
だが、今日はタイミングが悪すぎた。

「おお、ちょうどいいところに来たなジェイド。ちょっと手伝え」

そう言った彼女は着替え中だったらしく惜しげもなく肌を晒していて。しかも先の言葉の「手伝うこと」はどうやらその着替えを指しているらしく、ジェイドは溜め息を禁じ得ない。

「……陛下。そういうことはメイドの仕事でしょう。私などに頼まないで下さい」
「そうは言うがなぁ、あいつ等に頼むと無駄に着飾ろうとするからな」

だから一人でやろうと思ったんだが、ここが留まらないんだ。そう言って彼女は首の後ろの小さな金具を指して苦笑した。存外不器用な彼女の事だから、ホックが上手く留められなかったのだろう。
そのまま放置するわけにもいかず仕方なく彼女が用意したのであろう衣装へと着替えさせ、最後にまだ大部分を晒したままである滑らかな肌を隠すようにストールを肩からかけてやる。

「まったく、これに懲りたら今度からメイドに手伝わせなさい」
「だーかーらー、あいつ等に頼むとゴテゴテに飾り立てようとするから苦手なんだってば。どこぞの貴婦人じゃあるまいし、有事の時以外でお人形さんになるつもりはないぞオレは」
「なら、きちんと一人で着替えられるようになって下さい子供じゃあるまいし」

それからゆるりと妙に色香を放つ首もとに指を這わせ、わざと熱を込めた声でそっと囁いてやった。

「それに、一応私も男ですので。もう少し考えて行動なさい」

もう少し危機感というものを持ったらどうだと忠告の意を込めたその言葉を受けて、だが彼女は焦ることなく鼻白むだけだった。
ただジェイドを嗤うように口端をつり上げる。

「オレに惚れてるクセに色々なものに捕らわれ雁字搦めになって手を出せないような臆病者にそんな事言われても、説得力ゼロだぞジェイド」

根拠もなく彼女は堂々と言ってのけたが、全くもってその通りなのでジェイドは反論することが出来ない。両手を上げ降参の意を示す。
彼女は声を上げて笑った。

 


------------------

ブログに小説書く場合って、追記部分に隠すのがよくあるパターンですよね。
でも私は携帯から送るのに都合が良いので、通常部分にSS書いてその後あとがきと日記を書くパターンで。

とりあえず今日のSSの裏テーマは「脱・乙女な女帝」です(笑)
乙女じゃないので長いSSは書けなかったorz
本当はこの後、女帝からジェイドにほっぺにちゅーとかさせようとか思ってた。
そしてこれは昨日寝る前に書く予定だったけど、例によって例のごとく寝落ちた。

 

 


 

 

ゴロリと横になるのは屋敷の部屋ではなく、バチカル中層にある宿の一室であるベッド。
まあ確かにスリルがあってそれはそれで良いのかもしれないが、流石に仇の屋敷で逢瀬を楽しむなど控えるべきなのだろう。
俺が暇を頂いた日は、こうやって二人で過ごすようになってもうだいぶ月日が流れた。
――コイツと、そういう関係になってから、も。

「なぁ、ヴァン」

ブーツも手袋も上着も脱ぎ捨てた身軽な格好で、目の前の男を呼ぶ。
久しぶりの逢瀬だというのにこんな所でもなお仕事に励むヴァンを非難するように睨むと、苦笑されてしまった。

「もう少しお待ち下さい。これで終わりますので」

そう言われてしまえば、成人を間際に控えた男がこれ以上とやかく言うのも恥ずかしい。
それでも持て余した暇はどうしようもなくて、ベッドの上を転がりながらシーツにくるまる。
すると聴こえたのは喉で笑う低い声。視線を向ければ当然それはヴァンで、笑いながらなんとも楽しそうに此方を見ていた。

「…なんだよ」

自然と低くなる声。
けれどもヴァンは、そんな事ものともせずに言うのだ。

「いえ、可愛いらしいと思いまして」
「ばっか!そういうのは成人間際の野郎に言う台詞じゃないだろうが!ったく……仕事は?」
「終わりました」

サラリと言ってのけるこの男に、いつも自分は振り回されっぱなしだ。
それが、少しだけズルいと思う。
だからせめて、精一杯不遜な態度で手を伸ばし誘ってやるのだ。

「――来いよ、ヴァンデスデルカ」

この言葉の意味が分からないような付き合いはしてないだろう?

そうして伸ばした手を取り唇に接吻けてくるのを、そっと目を閉じて待つのだ。
 

 

 




 


接吻ければ、しなやかな腕が首裏へと回され結っていた髪を解かれた。
自分でやったクセに髪が顔に掛かるのがくすぐったいのか、身を捩り笑う姿がなんとも愛おしい。
額に、瞼に、頬に、鼻先に、唇に。首筋に。
接吻けの雨を降らせる度に上がる甘い吐息にクラクラする。
この、腕の中の震える存在に、こんな邪な想いを抱くようになったのはいつからか。
昔はただ、護り慈しむ存在だったというのに。
分かっていても、もう手離すことも、元の関係に戻ることは出来ないのだが。

「ガイラルディア様」
「何?」
「覚えておいででしょうか」

あの、幼き日に今は無き故郷の大地で交わした約束を―――

腕の中で、主は小さく笑う。

「もちろん。―――と、言いたいところだが。正直、覚えていない。と言うよりは分からない、かな?」

逸らされた視線。
約束を覚えていないことへの良心の呵責か。或いはもっと別の何かがそうさせるのか。
けれども予想に反しその唇から紡がれたのは、かつて彼と自分の間で交わされた約束の欠片たちだった。

「明日はピクニックに行こう。一緒におやつのクッキーを食べよう。姉上には内緒でプレゼントを作ろう。晴れたら花を摘みに行こう。良い子でいられたら家庭教師じゃなくヴァンデスデルカが勉強教えて。……ああ、そういえばヴァンデスデルカと結婚する、なんて約束もしてたっけ」

クスクスと子供のように笑い、悪戯めいた見詰めるその瞳の色に魅せられる。

「あの頃は、それこそ数え切れない程の約束をしてたよな。だから、『約束』のキーワードだけで以心伝心に成るのは難しいと思わないか?」

ああ、確かにそうだ。
私達は数え切れない程の約束をした。
覚えきれない程のそれらを、まるで愛しいものを語るような瞳で一つ一つ挙げていく様が、どうしようもなく堪らない気持ちにさせられる。
湧き上がる激情のままに強く強く抱きしめると、彼は苦しいと文句を言いながらも嬉しそうに笑っていた。
あの頃のままで。

けれども彼が語った約束の中に、自分が望んで訊ねた答えが無かったことが、悲しかった。
 

 

 




 


なぁ、ヴァンデスデルカ。
本当は、お前がどんな答えを望んでいたか分かっていたなんてお前が知ったらどう思うかな?
でも、分かっていても口にすることは出来なかった。
だって、俺は気付いてしまったんだ。
あの約束は果たされないことを。
いずれ俺達は道を違えていくことを。
 

 


 


ねぇ、ヴァンデスデルカ
ずっとずっと、傍にいてね?
離れちゃダメだからね
約束だよ

――この手を離さないで

 
 


 


それは、祈りにも似た約束だった。
その言葉に己はずっと縛られ続けていた。
この時彼の口からあの約束を聞いていたならば、道を違えることはなかったのだろうか。

「ガイラルディア様が忘れてしまっても、私はずっと覚えています。そして私は守り続ける」
「……ありがとう」

ああ、先に嘘を吐いたのは、私だったのか。
それとも主だったのか。
 

 

 


 


ええ、ガイラルディア様
約束致しましょう
私はずっと貴方のお側にいます
決して離すことなど致しません

約束、です

 

 

―――ずっとずっと、愛してる
 

 

 


-----------------

たとえエイプリルフールが昨日でxGが昨日だったとしても、その2つへの熱い想い(熱いのはたぶん後者のみ)を形にしたぜー!!な、ヴァンガイSSです。
やっと終わったorz
携帯だと反映されないって分かってて無駄にタグ打ちとかしたしね!間違ってないといいなー。パソから見ても反映されなかったら泣く。

つか、途中裏に突入しかけました(爆)
だって、首筋にちゅーとかさせたらヴァンせんせーがガイの服を剥ぎはじm(げふん)
ちょ、コレ一度日記に載せるの!日記で裏はダメ…!

そういえばヴァンガイできちんとした形でSS書くのは初めてだ私。
ガイ受カプの中で一番熱く語ってたのは実はヴァンガイなのにね。
でもヴァンガイとルクガイルクは、ガイ絡みの話には必ず川崎の中では前提として存在しますね。


 

 


「突然だが、結婚することにした」


彼女がその爆弾を投下したのは、議会も終わり解散となった時だった。
当然ながら一同はギョッとして目を剥くが、直ぐに彼女が愛玩しているペットのことかと気付き、それでどちらの方がどの方と?と、流すよう訊ねたのだが。更に彼女が爆弾を投下したのはその直後。

「なんっかお前ら勘違いしてるようだからハッキリ言うけどなぁ、『私』が結婚すると言ってるんだが…?」

発言の主――即ち、ピオニー・ウパラ・マルクト9世陛下が結婚。
あの、どんなに見合いを薦めようと足蹴にし「私の生涯の配偶者はこの国だ。私は生涯独身を貫くぞ。世襲制など止めちまえ!」と言い放った、彼女が。
……結婚?

「相手は…お相手はどちらの方なのです!?」
「ん?ジェイドだが」

訊ねられサラリと答えれば更に一同はどよめく。

「ジェイド大佐!?」
「先程までそのような素振りは見せなかったというのに…」
「カーティス大佐!説明を…!」
「彼は既に議会終了と共に執務室に戻っております!」

喧々囂々。突如として騒がしくなった議員達を、自分が原因にも関わらずピオニーは大変そうだなぁと笑いながら見ている。

「陛下」

そんな中、そっとピオニーに近寄り声を掛けてきたのは、生涯独身を貫くと宣言した際の胸に秘めたる想いを知る、数少ない理解者であるアスラン・フリングスであった。

「あの、経緯をお伺いしても…?」

彼はピオニーが何度もジェイドに告白し振られる度に相談を受けていた為、よく事情を知っているだけに下世話ながら興味があるらしい。

「昨夜、ジェイドから求婚された」

そう幸せそうな笑みを浮かべて言うピオニーに、アスランは一瞬驚いたように目を丸くしたものの、直ぐに彼らしい柔らかな笑みを湛えそっと祝いの言葉を告げた。

「おめでとうございます、陛下。どうかお幸せに」
「ありがとうアスラン」

そのやり取りを周りは見ていたのだろう。見計らったようなタイミングで声を掛けられる。

「…陛下。ジェイド大佐と結ばれるということが、どういうことか理解した上での発言と取ってよろしいのですね?」

質問というよりは確認。向けられた真摯な瞳に応えるよう、ピオニーも相手の目を真っ直ぐ見据えて答える。

「ああ」
「正直に申し上げて、課題は山積みです。式を上げるまでにだいぶ時間がかかりますが、それでも?」
「それでも、だ」

張り詰めた空気。互いの真意を探るように見つめ合う。
そしてそれがふと弛んだ時、議員達は困ったように笑ったのだった。

「…分かりました。我々も、出来る限りの努力をしましょう」

「ありがとう…!」

その時に浮かんだ彼女の笑みは、かつてない程に幸せに満ち溢れていたという。

 

 

 * * *

 

 

さて、その渦中にあるジェイドはというと。
いつもよりどこか騒がしい宮殿内の様子に、はてと首を傾げた。
サボり癖のあるピオニーがまた宮殿を脱走したにしても、いつもと様子がどことなく違うように感じる。
これで自分に何も被害被ることがないのなら気にしないのだが、何かと彼女が絡むと自分の方にしわ寄せが来るのだと考えると、知らずうちに溜め息が零れた。

「溜め息を吐くと幸せが逃げるというぞ、ジェイド」

気配なく背後からかけられた声にハッと振り向けば、そこに佇んでいたのは彼の師でもあるゼーゼマンだった。

「昨夜陛下に求婚し受け入れられたそうだな。おめでとう」
「………は!?」

覚えのない出来事にらしくもなく声を荒げれば、ゼーゼマンは声を上げ笑った。

「ところでジェイド、今日は何日だったかな?」
「…ノームデーカン 1の日ですが」

何故そのようなことを訊くのだろうか。不思議に思いながらも答えれば、満足そうに頷くゼーゼマン。
その笑みに今それがどう関係するのだと探るように見つめれば、ふと脳裏をよぎったのは彼女が好みそうなだいぶ昔に廃れた一つの風習。

「――まさか、あの馬鹿…!っゼーゼマン参謀総長も、分かっていて放置なさったのですか!?」

ある一つの考えに辿り着き、声を荒げるジェイドを窘めるように向けたゼーゼマンの視線は、どこか穏やかでそれは父親が子供を見守るような優しさに満ち、ジェイドは思わず言葉を呑んだ。

「あのような表情をなさる陛下を初めて見てな。…喩えそれが泡沫の夢だろうと、見守って差し上げたいと、そう思った次第でな」

陛下に掛け合うならば、今なら私室においでだ。
そう言ってジェイドの背を押し促すゼーゼマンにジェイドは戸惑う。彼が望むことを、自分は果たすことが出来ない。
けれども彼は、そんなジェイドの心中を察しているかのように笑って告げるのだ。

「いい加減、素直になれジェイド。自分の考えを正直に伝えろ。…彼女は決して、愚かな方ではないぞ」

 

 

 * * *

 

 

「陛下」
「おぉ!よく来たなジェイド!そろそろ来る頃だと思ってたぞ」

ノックもなしに私室に入って来たジェイドを、ピオニーは当然のように、寧ろ待っていたとばかりに迎え入れた。

「その様子ですと、私が何故ここに来たか既に分かっていらっしゃいますね?ならばこれ以上大事になる前に、結婚など大昔に廃れた風習にかこつけた嘘だったと、事態を収拾する手筈を調えていただけますか?」
「い・や・だ!」

先程まで機嫌良くジェイドを迎え入れた様子とは打って変わり、一字一句ハッキリと言い放ち子供のようにそっぽを向くピオニーを見て、溜め息一つ。
はっきり言って付き合いきれない。

「早くしないと、冗談が冗談でなくなるのですよ?分かってますか、陛下?」
「別に冗談として受け止められなかった場合、それでも構わないと思ったからこそ否定しなかった。…寧ろ、この事態に乗じて事実にしてしまえと、そう思ったのだが?」

真っ直ぐに見据えてくるその蒼が、彼女の本気を示していて。
けれどもジェイドはそれを受け止めることなくゆるゆると首を振り、ピオニーの真摯な想いを受け流す。

「陛下、何度も申し上げたはずです。光に満ち溢れた場所にいる貴女の隣に、私は相応しくない。貴女の隣には並べない、と」

眼前にある金糸に指を絡ませればそれは、キラキラと光を受けて瞬いた。
本当は、この至宝の存在である彼女を己のものにしたいという罪深くも欲深く考えがないわけではないのだけれど。そうしてしまうのは誰より自分が許すことなど出来やしない。
その代わり、と唇に乗せた言葉は、本当は自身へと向けた戒めだと、彼女は気付いていないのだろう。

「貴女の傍で、この身を賭して貴女を護ると、そう誓いました。それの何に不満があると?」

柔らかな絹のような髪にそのままそっと口付けを落とす。
慣れぬその仕草にピオニーは微かに躯を震わせたが、けれども彼女の性根のように真っ直ぐジェイドの目を見詰めた。

「それでも、誰も『ダメ』とは言わなかったんだ。お前と結婚すると告げた時、『課題は山積みだ』とは言ったが誰も『ダメ』とは言わなかった。…なぁ、ジェイド。事態はお前が思ったいる程重くないぞ?」

本当は、とても大切にされているのだと知っているから。だからこそ道が拓ければこの想いは受け入れられるのだと信じピオニーは訴えたものの、ジェイドはただ黙って首を振るだけだった。
落胆したように漏れたのは溜め息。
けれども一呼吸の間を置き再度ジェイドの瞳を見詰めて言う。

「ならばジェイド。せめてもの命令だ。今日という日のこの風習にかこつけて、一時の夢を見せてはくれないか」

一時の夢。泡沫の夢。
彼女が何を望んでいるかなど直ぐに分かりはしたが、そんなものに縋っていったい何になるというのか。

「いやですよ。冗談でそんなことが言えるような人間ではありません」
「そう、か…。優しいな」
「ええ」

それだけを告げて扉へと向かえば、それでもと追う言葉はない。
戸へと手をかけそこで思い出したように振り向く。

「ああ、そうだ陛下。私との婚姻の話、きっちりと撤回していただきますよ」
「勝手にしろ」

ひらひらと手を振りさっさと行けと示すピオニーは、もういつもの彼女の姿そのもので。
どうしてこう、いつも結婚とかそういう話題になるとあんなにも儚くて、けれども強くて必死になれるのだろうかとジェイドは不思議に思う。

「それと陛下」
「ん?」
「一つ覚えておいて頂きたいのですが。私も男ですので、惚れた女には自分からプロポーズしたいんですよね」

なんのことだか分からずにキョトンとしているピオニーを見て、自然とジェイドの口元に浮かぶのは悪戯めいた笑み。


「覚悟して待ってなさい」


――パタン

その言葉を残して、扉は閉ざされた。
向けられたその台詞の意味を考えて、ふと思い浮かぶのは自分に都合の良いものばかり。

少なくとも、ピオニーはジェイドに大切にされているという自覚はあった。
あの、他人に興味など持たない死霊使いに。

「ははっ、なんだソレは」

自然と笑いが込み上げてきて、きっとまだまだ扉の向こうに佇んでいるであろう想い人に向かい、言い放つ。

「その言葉こそ、嘘だったら許さないからな」

そうして待つのだ。
ずっとずっと、待ち焦がれた言葉を。

 

 


------------------

すみません…!
当サイトのウパラは、ただでさえピオジェの時でも乙女思考になるクセに、ジェピ、特に女帝ネタになると更にその乙女思考に磨きがかかります…!

ってことでエイプリルフールネタのジェピ。しかも女帝ネタSSでした。
川崎の趣味により、30後半だろうとコイツ等は少女漫画チックなことをやらかしてくれます。
でも私は楽しかったです。
個人的には大満足さ。


次はヴァンガイ…!
書きあがるかなぁ…。これ打ち始めたの10時だったのに…。時間、足りるか…?
 


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